hypertension

高血圧

【高血圧とは】

 日本高血圧学会は2009年の治療ガイドラインで血圧値を次のように分類しています。

 つまり、収縮期血圧が140以上または拡張期血圧が90以上が続くようなら高血圧と診断します。
一方、運動や緊張・興奮などによって一過性に血圧が上昇するのは正常な生理的反応であり、いわゆる高血圧の概念とはまた違うものです。したがって日時をかえて何度か測定し、それらの平均値を自分の血圧と考えればよいでしょう。


【高血圧の原因】

 高血圧には大きく分けて本態性高血圧と二次性高血圧があります。
多くは前者の本態性高血圧であり、年齢・遺伝・塩分・過食・肥満・アルコールなど多くの要素が関わって発症すると考えられます。
 一方 二次性高血圧は、腎臓病や副腎腫瘍など特定の原因によって発症する高血圧であり、場合によっては手術などで血圧が下がります。


【高血圧の症状】

 高血圧では頭重感・後頭部痛などがみられますが、それ以外には大した症状のないことが多く、気づかれずに放置されていたり、たとえ検診で指摘されても無治療のままという例が少なくありません。
 しかし、ある程度長い間そのまま放置すると、血管内壁に多大な圧ストレスが加わり動脈硬化が起こります。動脈硬化は血管壁の炎症を繰り返しながら進行増悪し、最も重要な生命線である動脈を狭さくないし閉塞させ、狭心症・心筋梗塞などの心臓疾患・脳出血・脳梗塞・クモ膜下出血・腎不全など、さまざまな合併症を引き起こします。 また、最終的には脳血管性認知症へとつながってゆきます。


【高血圧の治療】

 動脈硬化の成因として高血圧の意義は大きく、その治療は生涯にわたって非常に重要なものとなります。
全ての高血圧において当面の降圧目標は、正常血圧上限値すなわち140/90mmHgにおきますが、最終目標としてはヒトの理想血圧値、すなわち年齢や合併症の有無に関係なく120/80mmHgを目指します。ただし、降圧薬の種類・投与量・組み合わせ方・脱水などによって生じる過度な降圧は、自覚症状を悪化させて治療の継続を難しくするため、とくに降圧のスピードには細心の注意が必要となります。
 実際の降圧治療には食事療法、運動療法、薬物療法の三つがありますが、上記目標を達成するためには、これらの全てを並行させながら、継続してゆかなければなりません。


食事療法

 まず、全ての高血圧において食塩(NaCl)制限が必須となります。
現在日本人の食塩摂取量は1日平均14グラムくらいですが、降圧治療においては1日6グラム未満が減塩目標とされています。ちなみに梅干し1個でも1~2グラム、ラーメン1杯では5~6グラムもの食塩を含んでおり、これらも日本人の血圧を上昇させています。逆に1日0.2グラム未満の食塩しか摂らないとされている南米アマゾンのヤノマミ族では、高血圧が存在しないことが知られています。

 次に、塩分と同様に重要と考えられているのが体重です。
肥満による過体重は心拍出量を増加させ、またその原因である過食は結果的に食塩摂取過剰を意味します。たとえ塩分控え目にしているつもりでもトータルで摂取過剰となり、血圧を上昇させます。減量目標としては(少なくとも現在の日本では)、身長(m)の二乗に22(女性)ないし23(男性)を掛けた値(kg)が理想体重とされており、これ(肥満指数;BMI)が25を超えると“肥満”とされ、血圧上昇の一因となります。豊かな食材に囲まれて生活する現代人にとってBMI<25に抑えることは容易ではありませんが、腹囲増大、ひいてはメタボリック症候群につながることを考えれば、何としても実現させなければなりません。

 アルコールは、100%エタノール換算で1日20~30グラム(日本酒1合程度)が健康上限量とされています。飲酒は一時的に末梢血管を拡張させて血圧を下げますが、常習的・習慣的な飲酒は血圧を上昇させます。おそらく酒の肴やつまみなどからの食塩過剰摂取やカロリーオーバーが関与するものと思われます。

 タバコは心血管病の強力な増悪因子であり、降圧治療の意義すらも半減させてしまうので、禁煙は絶対必要です。現在ニコチンパッチや内服薬などの禁煙グッズも入手可能であり、決意一つで禁煙は可能です。


運動療法

 軽症高血圧なら運動によって血圧は下がります。
また薬物治療中であっても、定期的な運動の併用により薬を減らすことができます。無理のない範囲での有酸素運動、例えば体操・ウォーキング・自転車・水泳・ヨガ・太極拳など自分に合ったものを、1日30分以上定期的に続けることが大切です。


薬物療法

 血圧を下げるためのクスリが降圧薬であり、現在のところ利尿薬、カルシウム拮抗薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)、アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、レニン阻害薬、β遮断薬、α遮断薬などが使用されています。

 一般に利尿薬は尿をたくさん出すクスリとして知られており、腎不全や心不全などでむくみ(浮腫)がある時などにも使われます。しかし高血圧では、むしろ”脱塩薬”として使用されます。ごく少量の追加でも塩分排泄効果が大きく、他のあらゆる降圧薬の基礎薬として降圧効果を増強するため、降圧治療の要となる薬剤です。
 カルシウム拮抗薬、ACEI、ARB、レニン阻害薬、α遮断薬などはいずれも血管拡張薬であり、おもに細動脈レベルで末梢血管を弛緩させて血圧を下げます。β遮断薬はおもに心臓に作用して心収縮力や心拍数を抑え血圧を下げます。現在これらの2~3種類を組み合わせる併用療法が一般的となっており、これによって副作用も少なく抑え、かつ容易に降圧目標を達成できるようになりました。